SU100ジューコフ


発売時期 発売時価格
1967/03 ¥450



タミヤに限らず、何でもないキットなのになぜか発売期間が異常に短いキットというのが少なからず存在します。この1/35リモコンSU100ジューコフもまさにそんなキットです。

実は当研究室助手は、このバージョンのSU100を原体験で見たことがありません。物心ついた時は1/35リモコンSU100の箱絵は装甲列車が奥にあり、車上で兵士がマシンガンを撃つというおなじみの物(先頃再販された1/25ディスプレイSU100と同じ)に変わっておりました。しかし今回のこのボックスアートは1/35リモコンキングタイガー(大箱)のボックスサイドなどにずっと載っており、「本当にこの箱絵のバージョンが存在したのか」が確認できません。原画は1986年に出版された「高荷義之イラストレーション」にも載っており、タミヤが高荷画伯に発注した事はわかったのですが、箱の装丁さえ20年以上謎でした。

それが数年前に某通販絶版ショップの広告に箱の写真入りで載ったからさあ大変、一人で興奮して金銭では落ちないだろうとトレードを申し入れ、なんとタミヤスロットカー+アルファまで出して落札しました。送られてきたキットとの対面は20年以上捜していただけに歓喜あふれるものでしたが、よくある話でその数ヶ月後、横浜ワンダーランドにてあるオーストラリアのミニカーマニアが門外漢としてポツンと一つこのキットを売りに出しており、先のキットの少なくとも10分の1の金額で買えました。「世の中こんなもんだよな」と二つ積み重ねて並べてみると、なんと!使用モーターがTKK25とFA15とで違うバージョンじゃないですか、長生きはするものです。

脱線してしまいましたので戻しましょう。このキットの装丁はご覧の様に他の1/35リモコンキットとは違い横長のデザインです。同時期の同じ装丁としては1/35リモコンAMX30ナポレオンがあり、古くはキットナンバー1と2のパンサータンク、タイガータンクのそれぞれリモコン、1/21M2GUNロングトムも新旧共に同じ大きさの箱です。ここでなぜこの時期にナポレオンと共に箱の装丁を変えようとしたか推察してみましょう。この車体に鈴なりの兵士が乗った箱絵は若き高荷義之画伯の新ロゴ1/35の最初の作品です(前2作のリモコンパットンとオートマチックブルドッグは旧ロゴ)。そして一方のリモコンAMX30ナポレオンはタミヤに入社間もない大西将美画伯のデビュー作です。さらに小松崎茂画伯の1/35最終作は1966/12発売のシングルM4シャーマンです。つまり小松崎パッケージからの卒業に合わせて箱のデザインまで変えようとしたのではないでしょうか?しかしこの新スタンダードでは大きさに無理があり、次に発売される(1968/04)リモコンキングタイガーからは、当研究室で言うところの「大箱」となり、ブリスターパックなどの豪華版 でオイルショックの1973年までこの大きさが続きました。

ところでこのキットはNo.17のリモコンですから本来はキットナンバー「MT217」となるはずが「RC117」というイレギュラーなナンバーを持ちます。ちなみに同じデザイン箱のリモコンAMX30ナポレオンも「MT219」とならず「RC119」となりました。「RC」は言わずもがなの「リモートコントロール」の略だと思われますが、後にも先にも「RC」ナンバーがついたのはこの2つだけです。その後、装甲列車版箱絵になってMT217とナンバー問題は解消されますが、ナポレオンはRC119のまま装丁も変わらず製造停止になりました。

本来のこのページのテーマですが、この箱絵は売られた期間が非常に短く、少なくとも1969年には次の箱絵(装甲列車版)に変わります。いずれも高荷画伯の作品ですが、個人的にはいずれも最高傑作の部類と思っております。変わった理由としては箱の装丁の変更(横長から通常へ)、使用モーターがFA15からRE14に代わった事などがあげられます。例のアメリカ消費者団体からの抗議(箱絵にはキットに入っていない物は描いてはいけない)は時期的に当たらず、事実確かにキットに入ってない兵士が鈴なりだったのがやはりキットに入っていない兵士が車上でマシンガン掃射となっています。この装甲列車版は初期には押しボタン式リモコンンボックスでしたが1970年にレバー式に変わります。しかし他の大箱リモコンキットと違い、ボックストップに「4つの押しボタンで...」や「2つのレバーで...」といった記述が無く、箱を開けるまでどちらのバージョンかがわかりません。これは姉妹キットのリモコンT34も同じで研究者泣かせです。

今回は箱絵だけでかなり迷宮に入り込んでしまいましたが、皆さんの道案内になったでしょうか?


最後期版。このボックスアートでも押しボタン式リモコンボックスは存在した。
使用モーターの違い。RCナンバーにも注目。ホチキス留めと糊貼りまで興味深い。