M4TANK


発売時期 発売時価格
1958/08 ¥200



20世紀の内にこれだけは押さえておこうというわけでもないのですが、禁断の木製キット第2弾「M4TANK」です。実は完成品を保存しているという画像付きメールが大ベテランのsasakimdさんから当研究室に届き、ご本人の許可を頂いて急遽UPとなりました。

昭和30年代前半、タミヤは木製可動戦車模型のNo.1メーカーとして続々と新製品を発売しました。キャタピラを持ったキット名で見ますと「戦車」「雪上車銀嶺号」「ブルトーザー」「R−C戦車」「中型戦車」「無反動砲SS3」「レッドストーン」「エリコン」「タイガー牽引車」ときて満を持して登場するのがこの「M4TANK」です。「田宮模型全仕事1」の編集段階では静岡の田宮模型歴史資料館に完成品があるもののみを取り上げましたので、ここに名前が挙がったもののすべてが紹介しきれていないことをご了承下さい。先の「中型戦車」では正直、“誰でも作れてちゃんと動く”ということが画期的な時代です。「中型戦車」とあるように車種を特定していなかったわけですが外箱にはM4A3E8シャーマンの写真を使っていました。このM4を(型式は違いますが)3年の月日を経て再現したのがこの「M4TANK」です。プロポーションのすばらしさは早速完成写真をご覧下さい。

sasakimdさんによると「車体前面と後部の一部、転輪を“へたに”改造した」そうですが、当時の白黒完成写真と比べてみるとその苦労が忍ばれます。当時2台(!)購入し、技術が上がってから作った方を残しておいたそうです。ドライバーズハッチまわりの造形や前面の曲面表現、砲身先端の加工など見事です。モーターは指定のものより強力なTKK35、電池ボックスはオリジナルとは違います。この「M4TANK」はモデルとしても走行性能も良く傑作だったそうです。

しかしプラスチックモデルの黒船は既に国内の一部に到達しており、この数ヶ月後の1958年12月には初の国産「総プラスチック製完全模型」マルサンのSSN−571ノーチラス号が発売になるのです。それでもタミヤは戦車模型のジャンルでも木製にこだわり続け、1年後の1959年9月に「スターリン戦車」を、そして自らプラスチックモデル「大和」を出した後の1960年9月に「T34TANK」を発表し、ついに木製戦車模型の歴史に幕を下ろしました。タミヤ初のプラスチックモデル戦車「パンサータンク」の発売はさらに1年後の1961年12月でした。


車体前面の曲面表現に注目。 ノッシノッシと迫る威圧感。
上方図。プロポーションがわかる。 砲塔のシルエットが特筆。ロードホイルも改造。
強力TKK35モーター。電池ボックスもギリギリの大きさ。 後部のすっきりとした仕上げもお見事。

完成後も3層構造に分解でき、電池交換も容易。

日本模型新聞S33年8月25日号広告より。ポップなデザインは現在でも通用する。

田宮義雄自叙伝「歩み」より転載...ストレートに組むとこうなるが、それにしても壮観。

画像提供
ボックスアート:鈴木茂道氏
完成品:sasakimd氏