ホンダNV360

発売時期 発売時価格
1970/10 ¥400



当研究室初の自動車模型の研究です。タミヤの模型ジャンル展開としては何度か書いているように、パンサータンクの「陸」、武蔵の「海」、零戦の「空」、と始まったのですが、大票田の「陸の自動車部門」がずっと手薄でした。会社の危機を救った¥50のベビーレーサーに始まり、「ブルーバード」、「ロングジョン」といったスピードレコードカーや、「スーパーカー」といったSFモノと「現実離れ」したラインンナップが長らく続きます。程なくスロットカーブームがやって来て、そのボディーを使った廉価版の1/24グランプリレーサーシリーズ、1/32クイックレーサーシリーズの登場となるわけですが、まだまだ「これがタミヤのスケールカーモデル」と言える決定版が出ません。そんな中、満を持して登場したのが伝説の1/12ビッグスケールシリーズNo.1のホンダF1でした。ここで圧倒的なレベルの違いを見せて一気に世界トップレベルに駆け上がったタミヤが続けて世に問うたのが1/18チャレンジャーシリーズです。これはポルシェカレラ10やニッサンR381といった当時のレースブームにマッチした商品展開だったのですが、突然「スバルR2SS」と「ホ ンダNV360」の2つが加わります。この2つもカテゴリーで当時レースに出ていましたが、いわゆる「大衆車」がタミヤから出たのは、これが初めてとなりました。キットはボックスアートにある様にノーマル仕様で、レース用にするため改造記事が組まれたりしました。

当時の世相を考えると、若者が自家用車を持つことがようやく「夢のまた夢」から「あこがれ」に移っていた時期で、その若者に大人気となったこのホンダNV360のモデル化は、新しい模型の購買層を開拓する文字通り牽引車となったはずです。今からでは考えられないのですが、この車は車名にある様に360ccのエンジン(現在のスズキアルトのほぼ半分)を搭載し、大人4人を載せて軽快に走りました。この車を持つ事が、当時の若者にとって最高にカッコいい事だったのです。

当研究室助手がこの模型を作ったのは、発売から7〜8年以上経っていたと思います。実家の向かいに自動車修理工場があった事は以前書きましたが、この車もスクラップとして野積みされていました。実際の模型製作にあたり、「実物が目の前にある」という出来事に改めて感動したのを覚えています。作っていて「ここはどうなっているのだろう?」と思ったら外へ出ていき、実物をしげしげと眺めてくるのですから、最高の環境だったと言えます。初めての本格的な車のプラモデル製作だったわけですが、何と言っても塗装に苦しみました。それまで戦車模型で数だけは塗装も含めてこなしていたのですが、「ツヤあり全面塗装」の経験がなかったのです。箱絵の様に黄色にしたくて、白のボディーにパクトラのオレンジを平筆で何度も重ね塗りしたのですが、どうしてもムラになってしまいます。目の前の実物を見てのディテールアップ(と言うほどたいしたものではありませんでしたが)がむなしく無意味になっていく瞬間でした。縦に塗った後は、横に、それも出来るだけ薄目の塗料で...なんて一生懸命やったのですけれどねえ。結局これがケチの付き始めでこのホンダNV360は完成してお らず、まだそのままの状態で実家にあります。

そんなトラウマを引きずっていたところ、数年前に驚くべきキットを発見しました。なんと「ホンダNV360黄色バージョン」です。このキットは基本は白色ボディーで、何度か再販がかかったときもいずれもこの白色でした。ところが黄色バージョンが出ていたのですねえ。ボックスエンドにはさりげなく「黄茶」の文字が印刷されており、中には丁寧に青紙の台座に載った黄色ボディーがあるではないですか。確かに発売当時はこの微妙な黄色の模型用カラーは存在せず、皆さん苦しんだと思います。それがこんなバージョンがあったとは...。様々な資料からこのバージョンがあったのは初版のみと考えられますが、カタログ等にも一切こういった記述が無く、研究者泣かせです。一方のスバルR−2SSは赤バージョンを割と頻繁に見た様な気がします。

こういった成形色の違いは色々あって、1/50零観には白と緑バージョンがあり、これもボックスエンドにそれぞれ「白」、「緑」の表記があります。また1/35ではキングタイガーとハンティングタイガーの初期ロットがそれぞれ成形色が違うのは既に発表した通りなのですが、同時期に平行して発売された物としてはMT126の1/35シングルタイガーTがあります。通常はジャーマングレイの成形色ですが、ほんの一時期「成形色=ダークイエロー」の記述と共に、ダークイエロー版が存在しました。箱を開けた時に一瞬、最近発売されたアフリカ最初期型と見間違うほどです。これも機会を見てUPします。

などと言っていたら、あうとばぁん氏より貴重な画像を提供いただきました。その後当研究室が独自に入手したものと合わせて追加更新致します(2000/02/05)。

まず当研究室が偶然入手したのがホンダNV360の「白表記」バージョンです。再販キットのボディーカラーは白なのですが特に「ボディーカラーは白」といった表記はありません。しかし初版では「黄茶」と区別するためボディーカラー白バイジョンは「白」とボックスエンドに表記されていました。このキットにもボディーを載せる青の台紙が付属しており、使用モーターや定価表示から初版だということがわかります。

そしてあうとばぁんさんから届いた画像は「スバルR−2SS黄色バージョン」です。スバルも基本はボディーカラーは白なのですが成形色違いがあったことは既に述べました。しかしこの「黄」は不勉強な助手にとっては全くの初物です。ホンダNV360の「黄茶」ではなくて、こちらは「黄」なのは実際のボディー色を見比べていただければ良くわかります。なんだかタミヤらしくない薄いヒヨコ色が実に斬新です。そして助手がずっとあると思い続けていた「赤」バージョンですが発見できず、代わりに再販キットの「パープル」バージョンが出てきました。この色もかなり前からあったのでしょうか?いずれにしろこれも「らしくない」色です。あるいは最近のキットでミニ四駆のペレットでも使ったのでしょうか?

思わぬ迷宮に迷い込んでしまいました。今、気になっているのはスバルR−2SSの「白表記」バージョンと「赤」バージョンの存在です。どなかた情報をお持ちの方は当研究室助手まで連絡をお願いします。


ボックスエンド。輝く「黄茶」の文字。それにしてもいくら分かりやすいとは言え「黄茶」のネーミングは...
初版はボディーが白の時は、この様に「白」と明記してあったが、再販からこの表記が無くなりすべて白に。

青の台紙付きの豪華版。 デカールは完全にレース対応。当時の世相が...

ボディー以外の部品。メッキパーツのエンジン再現が大人の味だった。

初版には「黄色」バージョンがありました。これは逆輸入版 (画像提供:あうとばぁん氏)
再販ものには「パープル」バージョンが。

タミヤ「らしくない」色です。(画像提供:あうとばぁん氏)

このパープルも「らしくない」色です。