チーフテン(自動変速装置付)


発売時期 発売時価格
1965/02 ¥550



1/35戦車シリーズは初期に、とてもユニークなキットを発売しています。その中の最たるものがこの「自動変速」チーフテンでしょう。ボックスアート右下の黄色バック部分に確かに「自動変速装置」と書いてあり、説明もあります。

果たして「自動変速装置」とはどのような物なのでしょう?まずは説明書の一部をご覧ください。解って頂けましたか?このキットはメインスイッチの他に、車体下部に振り子式の重りつきスイッチを内蔵しており、普段は単二電池2本の3.0Vで走るのですが、登りの坂道に来ると、この振り子式スイッチが倒れて単二電池がもう一本分の電流が流れ、4.5Vにパワーアップ!します。と、これまた分かりやすい仕組みで、当時のメカニック大好き少年を熱狂させた事は想像に難くありません。

ボックスアートは脂の乗り切っている小松崎茂画伯。しかしこの「自動変速装置」付チーフテンは非常に短い期間しか発売されませんでした。

その大きな理由に’67年12月発売の1/25チーフテンの存在があります。このキットはイギリスのボービントン戦車博物館にある実車を取材した本格的スケールキットとして発売されました。そこで取材の過程で既に発売されているこの1/35チーフテンに色々誤りがある事が分かってきたのです。本来ならマニアであっても十分許容してくれるであろうことをタミヤの良心は許しませんでした。なんと1/25のチーフテン発売に先駆けて、’67年6月に金型を改修し、ボックスアートも斬新なホワイトパッケージに変えてしまうのです。

この時自動変速装置もオミットされ、この結果金型改修されたにもかかわらず、¥500という値下げした価格で発売になりました。思えばこれがタミヤが動く事主体から本格的スケールモデルへと移行する一つの指針表示だったのかもしれません。さすがに「自動変速装置」付をすぐに製造停止にせず、しばらく並行販売しましたが、これも期間は短かったようです。

さらにあろうことか、タミヤはこのホワイトパッケージの新版をすぐにマイナーチェンジします。使用モーターが「TKK25又はRE14」となっていたのを、トルク不足を補う為か、より強力な「RE26」使用に変更し、さらに車体上面や砲塔を梨地仕上げにし、成形色も深いダークグリーン系に変え、ぐっと高級感を増しました。ところがこれでもスケールモデルの観点から見ると決定的な欠点であるゴムキャタピラが災いし、’73年に製造停止になってしまいます。

その2年後の’75年にミリタリーミニチュアシリーズNo.68として完全新規金型の決定版が登場し、翌年の’76年8月にリモコンとして戦車シリーズのNo48に名を連ねます。思えばこれがタミヤが1/35で出す初のリモコンチーフテンになるのですが、世の中の嗜好はジオラマブームで徐々にモーターライズから離れ、ついにこの新金型版のシングルは発売されませんでした。



上:第U世代のホワイトパッケージ。
下:モーター等が変わった第V世代。
箱が一回り小さくなり、ユニオンジャックも消えている。
左:「自動変速装置」付の初代第T世代。
中:金型改修の第U世代。
下:第V世代。成形色の違いが良く解る。
第T世代と第U世代の違いのアップ。
ハッチの違いが明らか。
左:第T世代、エンジンルーバーは可動式だった。
右:第U世代
左:第U世代。表面がテカテカしてます。
右:第V世代。表面が梨地になったのが解りますか?
これが初代に付いた「自動変速装置」の振り子スイッチ。
銀色の重りが2個付いていた。