アポロ宇宙船


発売時期 発売時価格
1969/10 ¥700



1969年7月20日、アポロ11号にて人類は初めて月に立ちました。あれから丁度30年、記念すべきキットを紹介しましょう。

ソ連のガガーリン飛行士の世界初宇宙飛行成功により、ケネディ大統領はあせりました。なんの裏付けもないまま「アメリカは1960年代に人類を月に立たせかつ安全に帰還することを約束する!」と宣言してしまったのです。1966年2月、アポロ計画のロケットが完成し実験が始まります。しかし翌1967年1月、アポロ1号の地上テストで事故が起こり宇宙飛行士は全員死亡、最初からつまずいてしまいます。大幅な計画の見直しの後1968年10月、アポロ7号により有人試験飛行が再開され、アポロ8号で月に向かいます。人類で初めて大気圏を突破し、月の回りを見事に廻ったアポロ8号の成功を経て、ついに1969年7月、アポロ11号にて人類は月に立つのです。それはケネディ大統領が言った「1960年代」最後のチャンスでした。

まさにリアルタイムでアメリカはもとより、日本でも大変なアポロブームが起こりました。プラモデル業界もご多分に漏れず「アポロ」と名が付けば売れるとばかりに各メーカーから様々なキットが世に出ます。そんな中、タミヤニュースVol.18(1969/11月号)の表紙裏に「安直な模型化への警鐘と科学模型教材としての重要性」についてメッセージが載り、満を持し自信を持ってタミヤが世に送り出したのがこのキットです。アポロ11号の成功からわずか2ヶ月後のことでした。

このアポロシリーズは3種類あります。「司令船」「着陸船」そして2つ合わせた「宇宙船」です。スケールは1/70、どうせなら1/72にすれば良かったのにと思いますが当時はあまり気にならなかったようです。正確なスケールダウンは当然なのですが、タミヤが悩んだのは当時の主流である動力ギミックです。宇宙空間での動きを再現するために、天井吊り下げ飛行という形態を選びました。司令船の本体にRE−14モーターを内蔵し、後部にシャフトを突き出させ透明アクリルプレートの小さなプロペラを付けたのです。もちろん着陸船と合体しても「飛行」可能です。単品の司令船が¥300、着陸船が¥250、合体させたこの宇宙船が¥700では一瞬計算が合いませんが、こちらにはスペースクラフトと名付けられたサターン5型ロケットの先端部と展示台が付きます。

「アポロ13」の映画をご覧になった方はおわかりでしょうが、アポロ11号の成功があまりにもセンセーショナル過ぎたため、その後人々の関心は急速にアポロ計画から離れていってしまいます。模型業界もまさにそのままで、このキットもなんと1971年に製造停止となります。わずか寿命は2年間、模型としての完成度とはうらはらに、やはり「売れなくなった」というのは致命的だったようです。現在の目で見ても「着陸船」のプロポーションと月面ジオラマ台は十分合格と思うのですが、時代がそれを許しませんでした。余談ですが1/100スペースシャトルは10年後の1979年2月に発売となりますが、これまたすばらしい出来とはうらはらに当初はあまり模型としては売れなかったそうです。しかし皮肉なことに1986年のチャレンジャーの事故や日本人宇宙飛行士らの時に話題になりかなり売れたようです。これなどはアポロで学んだ安易な製造停止への反省と科学技術模型販売は模型メーカーとしての社会的義務という俊作社長のポリシーが感じられます。これが本物の日本版スペースシャトルHOPEの耐熱タイルまで進む理由ですね。

しかし不運なこのアポロのキットにも日があたるチャンスが25年後にやってきました。1995年、爆発的な人気を誇った映画「アポロ13」です。映画に出てきたのはまさにこのキットということで、タミヤ社内でも限定再販の話が当然のぼったといいます。しかし残念なことに金型の痛みが一部激しく、再販は見送られました。この時販売されれば相当な数が売れたと思うのですがいかがでしょうか?同じく金型が痛んで再販不能と言われた1/12ローラT−70も改修で再販できたように、30周年の今年こそなんとかアポロ再販は出来ないものでしょうか?

(1999/07/20)
上記の原稿を書いてから、もう5年半も経つんですね。月並みですが時の流れの速さを感じます。当研究室助手は2003年11月に、無謀にもこの「アポロ宇宙船」のまっさらなキットを組んでしまいました。あれから1年以上経ちましたが、拙作ギャラリーに追加しましたのでご笑覧下さい。

(2005/02/26)


No.1司令船¥300 No.2着陸船¥250

No.3宇宙船のボックスサイト。合体させても天井から吊してブンブンブン。

No.3宇宙船の全貌。サターン5型の先端部も付属する。 接着剤の上に透明プロペラがあるのがわかりますか?
左の半球体は天井からの吊り下げ部。右の円はNASAバッチに。 着陸船の脚部品。完成後も折り畳みが出来る。
月面とスペースクラフトの展示台。月面がリアル。 アームストロング船長!とオルドリン飛行士。
司令船はモーターライズ。1の図はアポロ13の映画を思い出す。 これが苦心の「見えない」透明プロペラ。

まさに豪華版の2種類の展示台。あこがれのジオラマが再現できた。