ありがとう!田宮俊作社長
(1,000人のサプライズ大作戦!!)

このツインスターマークが左右の奥にずっと広がり、なんと1000人が掲げています!大成功!!
左の奥へ向けての画像を、「静岡歌の会会長」様から送って頂きました!果てしなく続く、凄い迫力です!


動画が公開されました



2008年5月17日、田宮俊作社長(当時)に対して行われた1000人サプライズ作戦は大成功に終わりました。その模様は2011年6月に刊行された「静岡模型全史」に当研究室助手が拙文を掲載させてもらいました。ここに当該部分の全文を転載させてもらいます。




〜1,000人のサプライズ大作戦〜

 「今年の静岡ホビーショーの初日に田宮俊作社長が、社長をやめて会長になることを発表されるらしい」・・・衝撃の情報が入ってきたのは2008年の4月末の事でした。静岡ホビーショーまで既に3週間を切っていました。

日本中、いや世界中のプラモデルファンにとって、タミヤに一度もお世話になってない人なんて、まずいないでしょう。その田宮俊作社長が入社50年を機に社長の座から身を引かれる・・・これまでの功績に感謝の気持ちはきっとみんな持っているだろうけれど、何か目に見える形で表せないだろうか?「誰が何の資格でやっていいのか?」を自問自答しながら刻一刻と迫る時間との戦いも始まりました。

「本来はタミヤという一企業の中での人事異動に過ぎないわけだから、タミヤの社内で、それこそ社員の皆さんで何か公式行事があるだろう」と自分を納得させようとしたのですが、例えば自分の会社の社長が交代する時に、社員である自分の発案で何かイベントを企画するかといえば、誰が考えても答えは「否」でしょう。内部の社員だからこそ出来ないのです。

「仮にファンがやるとして、誰が何の資格で“ファン代表”となり、どんな企画をこの短時間でまとめてやるのか?」
「あくまでもタミヤの内部の事なんだから、仮に何かやるとしてもタミヤフェアなどでやるのがスジで、静岡模型教材協同組合主催の静岡ホビーショーでやる事自体、他のメーカーの方や、ひいては田宮俊作社長に迷惑をかけてしまう」
「いや、タイミングが全てだ。しかも日本中から7万人ものプラモデルファンが集う、年に一度のこの機会を逃してはいけない。多少の批判は当然受けながらも最初に感じた自分の心に素直に従ってみたらどうだろうか?」

そうと決心したら、あとは突っ走るだけです。まずは日本を代表する第一人者のプロモデラーでありプロデザイナーでもある金子辰也さんに相談すると大賛成され、プロジェクトリーダーになってもらいました。やりたかったのはアメリカの大統領選挙の時に見られる候補者の名前が書かれたポスターを全員で持って応援するスタイルで、この特製ポスターデザインを金子さんにお願いします。ゴールデンウィークで軒並み印刷屋さんが大型連休に入っている中、金子さんの人脈で当日ギリギリですが間に合わせてもらいました。

最近の静岡ホビーショーの目玉の一つに、全国の模型サークルの「合同展」があり、既に20年の歴史があります。参加団体数150以上、参加作品は5,000点を越える世界最大の模型展です。そして一般公開初日の土曜日の夕方17:30から合同展参加者の方々が集う交流パーティーがあり、例年1,000人ものモデラーが参加するのです。しかもその場で静岡模型教材協同組合理事長である田宮俊作社長の冒頭の挨拶があり、司会進行は私がさせてもらう事になっていました。この場でみんなが隠し持っていた特製ポスターをいっせいに掲げ「田宮俊作社長!ありがとうございました!!」と叫んで感謝を表そうというものです。

知り合いのモデラーに事前に何人か聞いてみると「いいよ!その企画!みんなでやろうよ!」と誰もが賛同してくれます。こうなれば動画で当日の模様を記録すべきと考え、モデラーであり特撮映画監督である宮本拓さんにお願いし、当日は3台のムービーカメラを投入し、カメラ位置の割り振りも決めてもらいました。高い位置からの撮影に2mの脚立が必要となれば、静岡クリエイトの山田明子さんが「ちょうど我が社でもイベント用に必要だと思っていたので買います」と快諾してくれます。宮本カメラ以外の2台のカメラも中潟憲雄さん、松坂忠光さんの両モデラーが自ら持参して回してくださいます。

この企画はあくまでもファン主導で行なうのであって、特定の雑誌が強くかかわっては公平性が保たれません。しかし速報で全国の模型ファンの皆さんに伝えてもらいたいのも確かです。そこで前日の金曜日に各模型専門雑誌の責任者の方々に連絡すると「それは素晴らしい!わかりましたスペースを空けておいて速報で伝えますよ」となりました。

まだまだ問題は山積です、いかにして1,000人の方々に短時間に趣旨を伝えて賛同して協力してもらえるかです。それは当日午前10:00から150人以上が参加して行われる合同展参加団体責任者会議しかチャンスはありませんでした。金子さんは手作りの趣旨説明とイラスト入りのチラシ原稿を作り、静岡クリエイトさんが200枚印刷してくださいました。会議で主催者側からの説明が全て終了したところで、初めて金子さんが「皆さんにお話があります」とチラシを配って説明したところ、会議に参加した皆さんが「やりましょう!」となったのです。色々と心配していた我々としてはホッと一息ついたところでした。もちろん「田宮俊作社長に絶対に悟られてはいけません、お願いします」の一言も忘れませんでした。

これで終わったわけではありません。1,000枚の特製ポスターを交流パーティー直前のわずか10分以内に会場で全員に配り切らないといけないのです。金子さんの紹介で博多の模型サークル・ゲルニカを中心とした名だたるモデラーの方々が静岡クリエイトの控え室に集まり、1,000枚のポスターを手分けして1枚1枚数えて50枚の束に小分けしてくださいました。さらに追加して有志20名を募り、集まったモデラーの皆さんにポスターを10分間で配り切る人員配置を相談してもらいます。模型専門誌に作例を何度も出している様な有名な方ばかりですが、みんながこのサプライズプロジェクトを心から楽しみ、笑顔で打ち合わせをして下さいました。

当日の連絡になってしまい大変申し訳なかったのですが、事前に静岡模型教材協同組合の長谷川勝重社長、青島典生社長、田宮昌行専務に事情を説明させていただき、この3分間ほどのサプライズに了承を頂きました。

いよいよその時はやってきました。当日の17:10、パーティー参加者の皆さんが続々と会場に集まってくる中で20名の有志が特製ポスターを配り始めます。肝心の主役の田宮俊作社長は、タミヤの曽根常務にお願いして直前まで「打ち合わせ」と称して会場から遠く離れたタミヤの控え室で引き止めてもらい、その控え室の前にも携帯電話を握り締めた仲間が連絡係として待機しています。

17:20、奇跡的に1,000人の参加者全員に特製ポスターが行き渡りました。各サークルの代表者から必ずしも正確に情報が伝わっていなかった人も多かったようですが、20名の有志の説明と特製ポスターを見た瞬間に例外なく状況を理解し、喜んで賛同してくださいました。そこで私がマイクを使って皆さんに改めて趣旨説明をし、1回限定のリハーサルが行われました。

皆さんも興奮して、地鳴りのような迫力あるリハーサルが成功しました。あまりにも上手くいったので欲が出て、前方にいる人が高く掲げると後ろの人が見えないので、前から3列ぐらいの方々までは腰を低くして掲げましょうと2回目のリハーサルも行いました。丁度その時、控え室の前に待機していた仲間から「俊作社長が控え室を出られた」と連絡が入り、各自、特製ポスターは折り畳んで隠し持つ様にお願いしてリハーサルは終わりました。

遂に17:30、何事も無かったかのように交流パーティーが始まりました。冒頭に静岡模型教材協同組合理事長として田宮俊作社長のスピーチが始まります。1,000人の参加者は緊張しながら聞き入っているのですが、中には写真を撮ろうとしてカメラを構えて脇に抱えた特製ポスターが半分こちらに見えている人がいて本当に焦りましたが、幸い俊作社長は全く気づいていらっしゃいませんでした。理事長としてスピーチを終え、ステージを降りようとなさる俊作社長を私がマイクでお引き止めしました。

「社長!少々お待ちください。
皆さん、田宮俊作社長は6月1日付けで社長を退任され会長になられます。田宮俊作社長!50年間!ありがとうございました!!!」
「ありがとうございました!!!!!!」
「ありがとうございました!!!!!!」


役目上、司会席の位置にいた私の目にも飛び込んできた1,000人が高々と掲げる特製ポスターの迫力・・・言葉に表せない程の感動でした。何もご存じなかった俊作社長は一瞬呆然とし、すぐさま1,000人の皆さんに深々と頭を下げられました。

「びっくりしました。何も聞いていなかったので。一生懸命やります、ありがとうございます!」

静岡ホビーショー50年の歴史の中で、会場を埋め尽くした1,000人もの人々の心が一つになる一瞬。もちろん田宮俊作社長という個人に負うところが全てですが、それは一企業の枠を越え、全国の模型ファンの心が一つになった瞬間でもありました。



※なお、当該サプライズに関してはタミヤニュースにも拙文を掲載させてもらっています。こちらをご覧ください。


(2020/05/15)


「静岡模型全史」 文芸春秋
 〜50人の証言でつづる木製模型からプラモデルの歴史



今年も無事に第47回静岡ホビーショーが終わりました。

実は田宮俊作社長が2008年6月1日付けで、会長に就任されることになりました。新社長は田宮昌行・現専務です。今年は田宮俊作社長がタミヤに入社してから丁度50年になる節目の年でもあるのです。

そこで俊作社長にみんなの「ありがとう!俊作社長」という思いを伝えようと、ファンによるサプイライズ作戦が敢行されました。

毎年、一般公開日初日である土曜日の夕方は、全国から集まってきたモデラーの皆さんの作品合同展交流パーティーが会場であります。そこで、このパーティーの主催者である静岡模型教材協同組合・田宮俊作理事長としてのスピーチの後に、全員でメッセージポスターを突然掲げよう!というものです。

用意された特製ポスターは1,000枚。勘のいい俊作社長に事前に感づかれてはいけません。そこでパーティーの直前20分前に、わずか10分間で1,000枚のポスターを配り切り、1回だけリハーサルをしてすぐに本番ということになりました。この間、田宮俊作社長が会場に現れないようにタミヤの曽根常務にお願いしてタミヤブース内の打ち合わせ室で引きとめてもらっていました。

実は、予想もしなかった事態や、細かなエピソードは沢山ありましたが・・・・・結果は大成功でした!・・・・一般的に、たった10分間でポスター1,000枚を配り切り、その場で説明があり、その後たった1回のリハーサルで上手く行くことなどは、普通あり得ません。急遽当日に結成された30人以上のサプライズ作戦スタッフ、そしてなにより参加者全員の田宮俊作社長に対する思いがあってこその大成功でした!

あ・・・ちなみにリハーサルは1回と書きましたが、最前列の方々も興奮して高々と掲げると、後ろの人のポスターがステージ上から見えにくくなることが判明し、その場でもう1回だけやり直されました。この本番画像を見ると、最前列の方々はちゃんと低く持って下さっていますね。また、社長に気づかれないように直前まで二つ折りにして隠し持っていなくてはいけないので、いざ揚げる時に上下逆さまにする人もいるだろうなあ〜と事前に何人かで話題にしていたら、やっぱりそういった方も何人かいらっしゃったのが画像からわかります。でも、返って興奮が良く伝わりますね。

聞くところによれば、俊作社長は会長になられても“隠居”などはなさらず、これまで通り世界中の模型ファンを導いて下さるそうです!それを聞いて一安心。でも一区切りです。

「ありがとう!田宮俊作社長!」

(2008/05/18)

いやあ〜、ホントに驚いた!ありがとう! その後、即席のサイン会も始まってしまいました
その夜、静岡市内の某居酒屋の奥座敷は・・・ 翌日の合同展ブースにも多数貼られていました。
みんなで寄せ書き!なんと大塚康生先生まで!! ファンの代表から、田宮俊作社長に渡されました


多くのファンの思いがサプライズポスターになりました