タイガー、パンサー100万台突破記念セール

タミヤ本社スペクトラムホール入口に展示してもらえました。


久々の更新は、今年の静岡ホビーショーと同時に静岡タミヤ本社で行われたタミヤオープンハウスの展示物を紹介しましょう。「タイガー・パンサー1,000,000台突破記念セール」です。

1962年1月に発売になったパンサータンクは爆発的な売れ行きを見せ、半年後に発売になったタイガータンクと相乗効果を生みながら、経営危機に陥りそうだったタミヤを起死回生のごとく救います。そして発売から丸3年が経とうとするところに記念セールが行われたのです。

当研究室がそのセールの存在を知ったのは恥ずかしながら21世紀に入ってからで、ネットオークションで見た小さな画像がきっかけでした。ある日、タミヤ1/21M40ビッグショット(!)が出品されたのですが、箱を開けた状態の出品画像の隅に見慣れないオレンジ色のチケットが見えました。出品者に質問をすると券面に印刷されている文字をすべて丁寧に教えてくださいました。「これは大変!」と入札を試みましたが、既に当研究室では複数のM40ビッグショットを所有しており、その1枚のチケットのためだけの思い入れの入札額では自ずと限界があり、残念な結果に終わってしまいました。あきらめきれない当研究室助手は出品者に再度連絡を取ったところ、「そういった理由でしたら、落札者様に品物は送ってしまいましたが、出品時に撮影したチケットの画像がありますので自由に使ってください」とのメッセージとともに画像が送られてきました。それは完全に正対したものではありませんでしたが、文字もクリアに読み取れる素晴らしい資料画像でした。

それから数年後に驚くべきものも入手できました。日本海側の某県に古くからある模型店に貼ってあったボロボロ状態のタミヤのポスターです。ラインナップから見れば1964年末といったところでしょうか?ウルトラSクラスの貴重な資料ですが、紙の貼りつきや汚れなどが激しく、蒸気をあてながら丁寧に除去し、台紙に貼って額装し、レストアを終えたのでした。

その後、ポスターに画像が載っていた景品に当たるオープンリールテープレコーダーも同型機を入手し、こちらも丁寧に磨きあげてセットで「田宮俊作展(2006年7月)」に展示させてもらいました。ちなみにこのポスターとオープンリールテープレコーダーをご覧になった田宮俊作社長(当時)の感想は「これはまた大変なものが出てきましたね。う〜ん、詳しくは覚えていないなあ〜」でした(^_^;)。

さらに時が過ぎて2008年4月に、「タミヤの動く戦車プラモデル大全」を出版するに当たり手持ちの資料を総まとめにして整理し直していると、大変なことに気付きました。それは、このチケットとポスターに書いてあるものが同じセールの内容を表しているものだということです。今から思えばどうしてこんな簡単なことに気付かなかったか不思議ですが、チケットには「タイガー・パンサー1,000,000台突破記念セール」と書いてあるのに、ポスターには「タミヤのタンクでテープレコーダーが当る」と書いてあったので、ハナから別の物だと先入観があったのでしょう。チケットも現物を持っているのではなく画像管理だったので次元の違う場所に保管をされていたのも原因の一つです。何よりチケットには「ステレオ1名様」と1等賞品がステレオであることが強調されていたのに、なぜかポスターではデカデカと2等賞品のテープレコーダーが画像とタイトルで大きくアピールされていたこともあるでしょう。

そんなこんなで無事に「タミヤの動く戦車プラモデル大全」には抽選結果発表の日本模型新聞記事まで入れ込んで整合性を持って紹介できたのですが、まさに校了直後のタイミングで、ネットオークションで大変なものを見つけました。それはジャンク状態のタミヤ1/35のM48パットンだったのですが、これまた箱を開いた状態の画像の隅に見慣れたオレンジ色のチケットが見えます。「ここで会ったが100年目!」との覚悟で入札したのは言うまでもありません。幸いM40ビッグショットとは人気の度合いが違うこと、ジャンクだったこと、そしてその存在も含めてチケットが何を表すものかおそらく誰も気づいていなかったこともあって、良心的な価格で落札することができました。

M48パットンには申し訳ないのですが、品物が届いて真っ先に確認したのはチケットです。既に印刷所には原稿が送られた後でしたので、増刷の折に反映することとさせていただきました。幸い売れ行きも好調で増刷がかかったため、2版以降の「タミヤの動く戦車プラモデル大全」では原物チケットをスキャニングされたものに差し替えてあります(p21参照)。

さらに時は流れ、遂に1等賞品を手に入れる日もやってきました。そこで「みんなまとめて展示をしたい!」とタミヤの某担当の方にお願いをしたら、「今度のタミヤオープンハウスの時に場所を作りましょう」というありがたいお返事をいただいたのです。

以上のように、長〜い経緯があって、見事に「タイガー・パンサー1,000,000台突破記念セール」の完全再現が可能となりました。実際に足を運ばれた方はどれほどいらっしゃるでしょうか?実際にタミヤ社内でもちょっとした話題になったようで、大きな古い古いステレオに「何これ?」だったそうです。ちなみに、いかに売れたとはいえ当時360円だったタイガーやパンサーが100万台売れたら、単純計算で少なくとも3億6000万円の売り上げになります。このあたりも田宮俊作会長に聞いてみたところ「う〜ん、おそらくタミヤの戦車のすべての累計だったんじゃないかな〜?」とのことでした(^^♪。今から45年前のオハナシでした・・・。

(2009/05/23)

当初送っていただいた貴重な画像。 正対ではないが、文字はすべて判読可能 (^_^)V
入手した直後の状態。 歴史の貴重な証人です。
紙が貼り付いて判読不能も・・・→ 丁寧に蒸気をあてて除去に成功!
上と同様に、破れと貼り付きもあったが・・・→ 無事にサラディンとスパイダーが登場。


こんなに立派な解説文を作ってくださいました。
レストアし、額装した状態でタミヤに持ち込みました。
遂に入手した「抽選券」は“現物”を展示しました!
別バージョンを追加入手しました。(2012/01/18)


日本模型新聞1965年2月5日付け号に詳細な記事が・・・
これがウワサの全国で一人だけが当選した金賞のステレオ!
まさに当時の再現。ピニオンギアがついた銅賞のTKK25モーターも当然展示。