ジオラマ


PARADISE :金子辰也 (1979)



何を展示したらお客さんに喜んでもらえるかを考えると、「やっぱりジオラマは置きたいな」というのは誰でも考えつく事です。その中でも常に最先端のレベルでタミヤと歴史を共に歩み、現在も完璧に保存されている方といえばこの方しかないでしょう、そう金子辰也さんです。

ご存じない方のために念のため。金子さんは1977年の第4回AFVの会に素晴らしい作品を持って突然彗星のように現れ(当時23歳の遅咲きでした)、伝説の集団「カンプグルッペジーベン」に入会。本職のグラフィックデザイナーのかたわら、ホビージャパン誌やタミヤ総合カタログに定期的にジオラマを発表なさっています。その工作技術の高さも当然ながら、金子さんの素晴らしさは“あくなき探究心とアイデア”にあります。大量にヒツジを登場させた「SHEPHERD」に始まり、川の水の表現とアヒルであっと言わせた「DRAWBRIDGE」、朽ち果てた97式中戦車と水着女性の体のラインに驚かされた「PARADISE」、そうかと思えば1本1本手作業で作った350本の「ひまわり」・・・どれも「まいった!」と感心するものばかりです。現在はプロのモデラーとして独立し、東急セミナーBE模型講座講師でもいらっしゃいます。テレビ東京系「TVチャンピオン〜プロモデラー選手権」であのチャンプ山田卓司氏を破っての第3回、第4回連続チャンピオンといったほうがわかるかもしれません。

金子さんはこれまでおよそ70点のジオラマを発表なさっていますが、実はその全ての作品が完璧な状態で保存されているのです。5年程前に当研究室助手が初めてその作品群を見せてもらった時の衝撃が瞬時によみがえり、すぐに相談させていただきました。

助手:「あの〜、金子さんはこれまで作品を展覧会などで一度に発表なさったことはあるんですか?」
金子:「いえ、ないんですよ。一度やりたいと思っているんですが、なかなか機会が無くってねえ。」
助手:「じ、実は、今度こんな企画がありまして・・・いかがですか?」
金子:「いいですね!」

なんと、二つ返事でOKを頂いてしまいました(これが2001年春のことでした)。それから金子さんの全作品のリストを頂いてタミヤ作品に限定し、さらに会場のスペースから考えて泣く泣く20作品に絞ります。ここである問題が発生しました。金子作品の代表作として「ひまわり」は外せないのですが、この作品に登場するV号突撃砲戦車がタミヤ製ではないのです。ここは直談判しかないと思い、田宮俊作社長にお願いしたところ「フィギュアにウチの製品があるならいいですよ」との暖かい言葉が頂けました。

そうこうして20作品も決まり、展示の配置を考えていた2002年の2月、さらに嬉しいことがありました。ワンダーフェスティバル会場で当の山田卓司さん(「TVチャンピオン〜プロモデラー選手権」第1、2、5、6、7回チャンピオン)と話していたところ、「ああ、良かったらあの作品、展示してもらってかまいませんよ」との言葉を頂いたのです!「あの作品」というのは他でもないMMM(ミリタリーモデリングマニュアル)誌の表紙を飾った「模型少年の日々」です。1975年の模型店を再現したこのジオラマはまさに今回のコンセプトに一致します。作品に既に別の展示予約があり、渋谷パルコ会場のみの展示になるという事はありますが、あの作品がナマで見られる機会を設けることができました。

(2002/03/05)


金子辰也・会場展示リスト
山田卓司・「模型少年の日々」