パラダイス(M4A3シャーマン)
「九州AFVの会2012」参加作品)

当時facebookに載ったこともあり、「こりゃなんだ?」と海外のモデラーの中でもちょっとした話題になった拙作です。


タミヤがパンサータンクを発売したのは1962年1月。そう、2012年はパンサータンク生誕50周年の記念の年になったのです!

タミヤ会長には事あるごとに「50周年記念で初代パンサータンクを限定再販しませんか?その時はディスプレイではなく、絶対にモーターライズ機構も再現してくださいね!もちろん内部のギヤーボックスは現代のもので結構です」と言い続けていました。すると2012年7月に開催された東武池袋タミヤモデラーズギャラリーで突然2つのキットが先行限定販売されたのです!それは1/35のモーターライズキットのパンサーGM4A3シャーマンでした。

正直、「ありゃ〜、ちょっと違うんだけど・・・(笑)」の思いはあったのですが、タミヤが1/35のシングル戦車を発売するなんて30年ぶりくらいの一大事なのです。もちろん私として買うしかありません!パンサーを1台、シャーマンを2台購入しました。そして重要なのはここからです。このキットを作らないでストックにしてしまっては意味がありません。タミヤが「シングルモーターで動く戦車模型の楽しさ」のために発売してくれたのです、作って動くところを皆さんに見てもらい、モーターライズ戦車の“楽しさ”をPRしなくてはなりません(この思いが後に博多の夜に暴走しますが・・・)。

これまで「完成品ギャラリー」では拙作を数々紹介してきましたが、まがりなりにも全てスケールモデルでした。資料を探して、より本物に近くを目指して来たものばかりです。しかし今回、初めてファンタジー作品を作ってみました。「楽しく作る」「気楽に作る」「楽しく走らせる」です。

とは言うものの、車体下部はとても精密に出来ています。何と言っても最上位機種では3万円以上するキットと同じギヤーボックスと足回りを使っています。正直、「楽しい工作シリーズの簡単なギアボックスにして、もう少し値段を下げられないのかな」の思いはありました。しかし実際に完成して走らせてみた時の呆れるほどの安定走行性能には舌を巻きました。かれこれ15年以上「動く戦車オフ会」の世話人をやっているので「シングル戦車」の基本走行性能というのはいやというほど知っています。40年前の金属ギヤーボックスとモーターの噛み合わせ、スイッチの接触不良、キャタピラとスプロケットホイルとの相性、キャタピラのテンション・・・どれも侮れないんです。大切に大切に慎重に調整した時に初めて見事なシングル走行をしてテル坂、高見山(シングル戦車コースの名所難関)を乗り越えることが出来るのです。後にコースを走らせて初めて分かるのですが何回やってもこのシャーマンは完走するのです。驚きました。

今回の製作の動機付けは、ひょんなことから「九州AFVの会2012」におじゃますることになった事でした。「手ぶらで行くのも何だから・・・でも全国のAFVの会で一、二の充実度を誇る超絶作品満載の九州AFVの会に私が出す作品があるわけもなく・・・」そこで今回の事になったのです。しかも神をも恐れぬ行為を行ったのでした。なんと東京を発つ時は基本製作と基本塗装のみで、福岡入りしたビジネスホテルの部屋で“当日の朝に最終偽装を行う”という暴挙をやったのです。「いかにお気楽に楽しんで作るか」の実験でもあったので、前日入りして前夜祭でしこたまアルコールも飲ませて頂いていました。

当日の朝、穏やかな気持でベッドから起き上がり、瞬間接着剤片手にどんどんフィギュアを配置していきました。戦車は1/35、プライザーのフィギュアは1/87スケール。スケールが合っていなくても全く気にしません。これはファンタジー作品なのです。正直、メチャメチャ楽しかったです。「馬鹿だね〜♪」を何人の方に言ってもらえるか、楽しみで仕方がありません。作りながらニヤニヤしてしまいます。金子辰也さんのサイパンでの97式戦車の作品のオマージュとして「パラダイス」という作品名にしてみました。

会場に入り、まず田宮俊作会長に見てもらいました。「絶句」  最高のリアクションです(笑)。その後、超絶作品が並ぶ会場の片隅でずっとこの拙作は展示してもらいました。そして事あるごとに傍にいた私が「これ、タミヤの新製品です!ほら、走るんです!」と車体下部のスイッチを入れて走らせると、例外なく皆さんが笑顔になりました。


ところで、話はこれで終わりませんでした。この日の展示を終えてまたまた飲みに行くことになったのですが、ちょうどこの期間中にオクトーバーフェストが福岡で開催中だったのです。オクトーバーフェストといえばドイツビールの祭典です。私も毎年、日比谷公園会場や横浜赤レンガ会場に行ってます。本場ドイツにも2度行ってます。だからこのタイミング福岡で開催されているなら行かない理由はありません。九州AFVの会世話役のゲルニカの皆さん達とドイツビールを楽しんでいたのですが、「このタミヤの新製品を皆さんに啓蒙しなくては」との思いを抑えきれず(?)、突然隣のテーブルに行って「初めまして!ちょっと失礼します!」と、やおらシャーマンを走らせたのです。

お伝え忘れていましたが特製プールの底には自動で7色に変化する電飾を仕込んでありましたから、ゆっくりとキュラキュラ走ってくる白い塊の上に何やら小さな人形がたくさん乗ってて、しかも7色に光るのです。「なにこれ!?」「かわいい!!」とスマホ撮影会の嵐になりました。瞬時にして見知らぬ同士が笑顔になります。みなさんどんどん触りますので、フィギュアがポロポロと折れて欠損していくのですが、冷静に取れたフィギュアを回収しながら各テーブルを周りました。ゲルニカの方が「この人はなんて人なんだ」という目で私をあきれて見ていらっしゃった記憶が断片に残っています。かれこれ30分近く走らせ、バッテリー切れになるまでやり続けました。大変お騒がせしました!とても楽しかったです!


(2014/03/30)

パンサータンク発売50周年(車体にも50の数字が)。タミヤからのプレゼントです。
今からでも遅くありません、皆さん、M4A3シャーマンを一つは買いましょう(笑)
上位機種最上位機種と同じギヤーボックスを片側だけ使用するので
1モーターのシングル走行とはいえ、驚くほど安定した性能を見せます。
初版ロットのみ、往年の小松崎画伯のボックスアートが付属しました
先行発売された池袋東武タミヤモデラーズギャラリー2012では田宮会長のサインも
自宅でここまで作ってから、これを持って九州に旅に出ました
あ、出掛けにこんなのも作りました
タミヤ透明エポキシ樹脂に子供をフィギュアを差して、割り箸で挟んで固定します。
これが秘密兵器です。プライザー社の人形。ネットオークションで安く落札出来ました。
この状態で「九州AFVの会2012」当日の朝をビジネスホテルで迎えました
色々と人生模様が見えるように配置していきます。
プールに浮かぶ子供は偶然の産物で、とっても良い角度に固まりました。
完成です!ビジネスホテルの机の上で出来上がりました!
こんなに楽しいモデリングはいったいいつ以来でしょう(笑)
九州AFVの会、スペシャルゲストの田宮俊作会長も思わず「絶句」
会場でこんな感じで展示され、おそらく異彩を放っていたと思います。
パンサータンク発売50周年なので、そのパンサータンク有史以前の
田宮模型教材社木製戦車工作キットも持参して展示しました(ますます異彩)。
「九州AFVの会2012」は、本来はこういった超絶作品が満載の素晴らしい会です。
福岡市のど真ん中の会場ですので大盛況です。
畏れ多くも、私もスペシャルゲスト扱いになってまして
私が賞を一つ選ぶことに。驚きながらも森年様の作品をご指名させていただきました。
実はこのM4A3シャーマン、プールの底が7色に光る仕掛けを仕込んだのです
もちろん走るんです!
福岡の夜といえば・・・ちょうどオクトーバーフェストをやってました!!
ホーフブロイハウスの大ジョッキをガブガブ飲み始めるとスイッチ(何の?)が入って・・・
「初めまして!ちょっと失礼します!!」ドイツビールのテーブルの中を走る走る・・・
どこのテーブルでも「ナニコレ!?カワイイ!!!」と大好評でした(ホントか?)
こんな風に皆さんペタペタ触ってくださいました(笑)
その後、静岡で行われたタミヤフェアではシングル戦車コースを楽々走破しました!