万景峰92
(マンギョンボン号)
2003年6月9日(月)。新潟港に北朝鮮・朝鮮民主主義人民共和国の万景峰号が入港する予定でしたが、前日の段階で北朝鮮の元山(ウォンサン)を出港していなかった事が判明し、当然のことながら日本にはやってきませんでした。「中止」か「延期」か意見が分かれるところでしたが、先方から出されている年間予定表によると次の入港予定は2週間後の6月23日(月)とのことでした。 当研究室助手は会社のデスクと相談し、「万景峰号の模型があれば、次回の入港時によりわかりやすく内容が伝えられる」ということで意見が一致しました。もちろんこの船に関しては既存のキットはありませんので、作るとなればスクラッチ(自作)になります。言い出したのは自分ですが、よほどの覚悟がないと出来ません。図面などはもちろん一般に公開されておらず、写真さえ数枚しかありません。あくまでも報道資料用のオブジェと割り切るにしても、どのレベルまで再現できるか責任重大です。そこでさらに種々のツメを行った結果、当研究室助手が“個人的に自宅で作ってみる”ことになりました。「模型は、あればbetterだが、mustというわけではない。間に合わなかったら、元々この話は無かったもの」というスタンスにしたのです。 この話があったのが6月10日(火)。入港の前日である22日(日)までに必要ですので、与えられた時間は実質12日しかありません。まずは資料捜しから始まりました。最初にインターネットで考えられるあらん限りのキーワードで検索するのですが、実際に使えそうな画像は数えるほどで、それも小さなサイズばかりです。そこで過去にお世話になった事がある某出版社にお勤めの方に問い合わせたところ、「公開されていない写真が何枚かありますね。それぞれ版権があるので、あくまでも個人的に模型製作の資料として使うのであって公開しないのでしたらお貸しできますよ」とのありがたいお言葉。すぐに飛んでいってコンビニでカラーコピーさせていただきました。さらにテレビで公開された事がある資料映像を短く編集した(実質総尺3分ほど)VTRが手に入りました。本格的にスクラッチする方にはお分かりかと思いますが、とてもこれでは資料が足りません。しかし「こんな条件だからこそスクラッチする」というのもまた真なのです。 万景峰号については、現在数々の疑惑が取りざたされています。当研究室助手も本業のマスコミの端くれとして責任あるバランス感覚の認識は持っているつもりです。しかしここではそういったこととは別次元の「模型製作」という視点のみで進めていくことをあらかじめお断りしておきます。 今回、実際に作ってみることにより「この突起物はどんな役割があるのだろう?」「ここはこうしてつながっているので、こんな意味があるんだ」といった事が数多く出てきました。試行錯誤の製作過程を通して、他の人には無い角度からの視点でのアプローチが出来ました。その後の情勢の変化により締め切りがどんどん延びていったのですが、当初の予定の倍の日数である25日間でとりあえず完成ということになりました。合計作業時間は100時間以上。貴重な体験をさせていただきました。 (2003/07/06) |