06月17日(木)
<本撮影締め切りまで08日>

ワイヤーカッターの自作

完成後も折りたたみ可能です。


例によって、久々に製作日記を再開します。

何かに取り付かれたかのように走りまくった静岡ホビーショー前でしたが、力及ばず完成品を持ち込むことは出来ませんでした。それでも展示会場では、返ってフルスクラッチであることが強調されたらしくなかなか好評で、ともすれば「これでいいや」になりがちでした。さらに、静岡の熱気が全く覚めやらないうちに政府専用機を急遽(それも結果的に2機も)作る事になったり、カイシャの上司からプライベートであるものの修理を依頼されたりしたこともあって、実際に丸々1ヶ月手付かず状態で放置されていました。

しかしそんな腑抜けな根性は、ある方の一言で吹っ飛びました。他でもないアーマーモデリング誌の小泉編集長の言葉です「あの軽装甲機動車はいいですよ!次号(Vol.57:2004/07/13発売号)のアーマーにちゃんと載せましょう!!」「え!?」・・・確かに最新号(Vol.56:2004/06/13発売号)のアーマーに、あの平田氏の“イラク派遣自衛隊隊長像”が氏の連載コーナーを休止して番外編として紹介され、その中では当然のように“静岡での真っ白い軽装甲機動車と並んだ画像”もカラーで紹介されているわけでして「なんだかマズい雰囲気だナ〜」と思っていたところでした。

確かに毎月ライターの端くれとして、貴重な絶版キットを組み上げてのなんちゃって完成品画像を誌面に載せてはいますが、それは「技術はニの次」のあくまでも素組みに過ぎません。今回の趣旨では、完全に“モデラー”としての作品紹介になってしまいますので緊張感が全く違います。しかも、無塗装状態の完成品で一度スタジオに持ち込んで撮影し、その後に塗装をして再度スタジオに持ち込む事を考えると、例によって全く時間がありません。再び一気にトップギアの緊張感に持っていかれました。

まだ出来ていない部分を洗い出すと、天板に付くワイヤーカッター、ヘッドライトまわり(ガードや電飾機構も含む)、ワイパーなどが考えられます。これを5日以内に仕上げて一旦スタジオに持ち込んで撮影し、すぐに回収して3日以内に塗装して再度撮影するのが考えられるギリギリのスケジュールです。しかし冷静に考えてみれば、かつての模型少年にとって、自分のフルスクラッチ作品が模型専門誌に数ページを使って紹介されるなんて最高の栄誉に他なりません。モチベーションは最高の状態になりました。

最初に取り掛かったのは車体天板に付くワイヤーカッターです。天板ハッチから隊員が顔を出してパトロール中に、敵が街中にピアノ線などを張るトラップを切断して回避するものです。これはイラク派遣車両にのみ取り付けられたものですので、一般には詳細なデータは一切公表されておりません。この時点で所有しているサマワ現地での画像を穴の開くほど見つめて寸法、形状、構造を導き出しました。

左右同じ物が2枚セットになっているのですが、微妙な曲線で構成されているため、別々に削り出していくと、どうしても個体差が出てしまいます。そこで思い切って2枚を瞬間接着剤で点付けし、2枚同時にヤスリで削り出して、形が整ったところでカッターナイフの歯を立てて分離しました。実車の画像を見つめてみると、このワイヤーカッターは単なる金属板の切り出しではなく、まさにカッターの刃にあたる前面エッジはナイフ状に削り込まれていることが読み取れます。ともすれば左右対称に(例えば内側が)削り込まれているのかとも思いましたが、さすがに軍用車両だけに(最前線でのメンテナンスを考えると)すべて向かって右側が削り込まれた左右同じ物が使われていることがわかりました。大型スケールでフルスクラッチしているだけに、こういった事は早速反映させます。

画像から読み取れるあらゆる長さをノギスで測り、ブロック状の突起物やいくつか開いている穴の位置を特定しました。一番気を遣ったのが折りたたみ式になっている支点の位置でした。これも何回かの試行錯誤でようやく決定し、ピンバイスで穴を開けて真鍮線を差し込みます。その後ブロック状の突起物や各種ボルトを接着して最終仕上げとし、何度か起こしたり倒したりしているうちに、ようやくそのブロック状の突起物の構造上の意味がわかりました。後方から撮られた1枚の不鮮明な画像から、実はワイヤーカッター立てている時には裏側からチェーンでつながれたピンが差され、垂直を保持させる機構があることがわかったのですが、そうすると支点の位置が上下左右方向にそれぞれ1mm程ずれていないと辻褄が合わないことが判明したのです。見る人が見ればすぐわかるミスなのですが、締切時間が迫っているため涙を飲む事にしました。ただし垂直状態で固定されている分にはなんら破綻していない事を苦しい言い訳とさせて頂きます。

(2004/12/06)


ラフ図からアタリをつけて削りだしますが・・・。 2枚を重ねて瞬着で点付けし、同時に削りだします。
縦にカッターナイフの刃を入れるとスパッと割れます。 こうして全く同じ形物が2枚できました。
実車同様、前面の向かって右側が削られたナイフ状。
慎重に穴も開けられて真鍮線を通し、可動状態に。
最後の仕上げが終わったところで、ようやく構造がわかり
あらららといったミスが判明・・・(^_^;)。
向かって右側から削られ、ナイフ状になっているのが判明。 数少ない画像から形状、寸法、構造を把握。