05月03日(月・祝)
<あと12日>

ドアの製作(1)

ここまで細かく図面を引くつもりは無かったのに・・・。


この日はゴールデンウイーク真っ只中の祝日。丸1日を模型製作に充ててしまいました。家族の暖かい(?)理解の賜物です。

昨日のシリコーンは十分硬化したと思われましたが、これまた無理をせずに別の作業に取りかかります。今回のフルスクラッチは2/23(1/11.5ともいう)という大スケールな為、ともすれば大味な物になりかねません。それを避けるためにシャープなモールドをポイントを絞って再現することになるのですが、最後まで悩んだのがドアの内側にギザギザの出っ張りまであるリムの表現でした。

もちろんこれを再現したいのですが、実車であの薄さの物を模型でどう再現するか思いつきません。この製作日記では1日で進んだ事になっていますが、このリムの表現方法は、かれこれ数週間前から悩んでおり、この日も結論が出ていませんでした。しかしフルスクラッチにおいては「すべてクリアになってから取りかかる」ことが理想とわかっていても、「しのごの言わずにやるんだよ」を続けないと前に進まないことは、拙いレベルの経験ですが体にしみついています。「ええい!とにかくドアの図面を引き始めよう!」と描き出しました。

ちなみに今回のフルスクラッチ製作過程で用意できていた資料は下記のものです

☆試作車両(朝霞に実車展示あり)
 ・実車実測寸法(ありとあらゆる長さを測りました)
 ・画像およそ600枚(金子さん撮影分300枚はCD-Rで送っていただきました)
☆量産型
 ・ネットで集めたスナップ画像50枚程度(基地祭などで撮影されたもの)
 ・PANZER 2003/05号 「特集:陸上自衛隊軽装甲機動車」
  (実はこの号に3面図も載っていたのですが、ナニでしたので全く使っていません(^_^;))
☆イラク派遣車両
 ・アーマーモデリング 2004/04号 P53(この1ページの画像には多くのデータを頂きました)
 ・カイシャの同僚に撮ってもらった、現地イラクサマワ&○おすみ上での画像50枚程度

朝霞の試作車両でしっかりと測定してありますので、アウトラインの図面はすぐに引けます。ドアの各コーナーのRに関しては、写真を穴が開くほど見ながら雲形定規などを使って描いて行きます。今回作っているイラク派遣車両は、量産型と違って窓に増加装甲が施してありますので、この形状を図面に起こすのが最初のポイントです。カイシャの同僚に送ってもらった貴重な画像の中に、増加装甲窓そのものズバリの画像が何枚かあったので助かりました。次にディテールとして内側にギザギザに膨らんでいるドアリムの形状を写し取っていくのですが、これがいけません。アップの画像が多く、確実に位置特定できない部分が3割程残ってしまいます。このドアリムに関して言えば量産型と全く同じなのですが、ワタシが用意できた量産型の資料を使っても位置特定が出来ない部分がまだ1割程残ります。タイムリミットまであと12日という状態では、「細かい事にこだわりすぎて完成させられない」ことだけは避けなければなりません。仮に図面が引けたとしても、この内側のリベット付きギザギザリム部分はどんな材料を使って再現するかがまだ固まっていない状況ではあきらめるしかありません。「とにかく時間がない。ギザギザのリムの表現はナシにしよう」と涙を飲んで決めました。

前述のように、この日は朝からずっと作業を続けています。昼食を取りながら頭を冷やしていると、ふとアイデアが浮かびました。「そうだ!こうすれば出来るかもしれない!いや、きっと出来る!」・・・実はリムの表現にどの材料を使うかに関しては、ギザギザ部分だけでなくエッジの盛り上がった外周部分の表現に関しても悩んでいました。エポキシパテで角柱状の物を作り、軟らかいうちにぐるっとドアの周りに盛り上げることを考えていたのですが、この方法ではどんな達人でもシャープさに欠ける表現になるのは想像できます。1.2mm厚のプラバンを長い短冊状にするとしてもRの部分の表現が困難です。しかしこのR部分を正確に再現する方法(後日UPします)をここでひらめいた事により、一気に流れが変わりました。

「ギザギザエッジ部分だけ分けて考え、2層構造にしよう。0.3mmプラバンでは加工に難があるし、何よりも厚すぎる。0.2mmなら透明プラバンがあるが、今は使いたくない(笑)。そうだ!こんな時こそ絶版の0.14mmプラペーパーだ!」・・・こうなると止められません。スケジュール上は、ギリギリの計算をしても既に3日分は遅れていたのですが「寝なければいいんだ」とムチャクチャな考えで押し切ろうとします。こうなると不思議なもので、不明だったリベット付きギザギザリムの位置も不鮮明な画像から読み取れてきます。最後に数箇所だけは「このリベットは構造上、隣の扉の位置と同じ高さになるはず」との推論で特定しましたが、なんとか満足のいく図面が出来上がりました。

ちなみに静岡ホビーショーや池袋東武タミヤモデラーズギャラリーに実際に行かれた方は、あの天才クリエイター嘉瀬翔氏の「90式戦車4台、軽装甲機動車2台の1/35スケールジオラマ」をご覧になられましたでしょうか?ホビーショー当日にご本人にお話をうかがうと、なんと1/35スケールで軽装甲機動車をフルスクラッチしていたとか!それが4月に入ってタミヤから製品化されることを聞き(あの嘉瀬氏が味わったショックを、ワタシも同じく味わえたのかと思うと嬉しい・・・)、半分以上出来ていたのをあきらめ、ゴールデンウイーク明けにタミヤから軽装甲機動車のテストショットを送っていただき5日で仕上げたとか・・・。しかし嘉瀬氏のジオラマは国内演習中の設定ですから、タミヤの「イラク派遣車両」キットを「量産型」に改造しなければなりません。これが見事に決まり、1/35スケールにもかかわらず極細真鍮線でライトガードまで作ってありました。(画像01画像02

この嘉瀬氏のジオラマについて、まさに昨日届いたタミヤニュース最新号(Vol.424 2004/09)で紹介してあるではないですか!それによると氏は昨年8月に行われた富士の総合火力演習を初めて見学しその迫力に大変な衝撃を受け、さらに新型アイテムである軽装甲機動車(もちろん量産車)のスタイリッシュな姿に心を奪われ、演習後の車両展示で実際に軽装甲機動車(量産車)の写真を沢山撮られたとか。なんともうらやましい話ですが、物は考えようで試作車両とはいえ心ゆくまで実車の寸法を測れたワタシも幸せ者です。

話を元に戻しましょう。リベット付きギザギザリムの図面が出来たので、これを元にプラペーパーの切断に入ります。まずは近くのコンビニへ行って、コントラストを最大に設定して白黒等倍コピーを取ります。このコピーをドアごとに1枚1枚切り離して、写真のネガポジを見るライトボックス(かつて子供の写真を撮りまくっていた時にネガ整理用に購入したのですが、全く使われずに眠っていました)の上におきます。この上に0.14mmプラペーパーを載せてスイッチをONにすると、図面が浮き上がります。プラペーパー自体は透明ではなく白色ですが、この薄さなのでしっかりと光を通してくれます。ライトボックス上で切り出し作業を行いたいので、コピー図面の下に透明ポリプロピレンのシート(何かが入っていたケースを切り開いたもの)をカッティングマットとして置きました。

あとはデザインナイフでコツコツと切断していきます。直線部分はもちろんスチール定規(このページTOP画像のタミヤ製を長年愛用しています)を使い、問題のギザギザ部分はひたすらフリーハンドで切り出します。左右2枚ずつと後部の合計5枚。出来上がってみると例によってなんでもないものですが、とても満足し充実した1日になりました。

(2004/08/08)


ええい!とにかく図面を引いてみよう。スタート! 第一段階。自分としてはかなり満足(^_^)
ドアリムのリベット位置も特定したかったけれど断念。 イラク派遣車両は窓にリベット付き増加装甲がある。
静岡ホビーショー当日に屋外展示された量産型実車
こんなに簡単に撮れたらリベット位置特定に苦労しなかった
リベット付きギザギザリムの拡大画像。
この薄さを模型では表現不能?
朝霞の試作車には上記のギザギザリムが無い。
これに気付いた時は焦りました。
数少ない資料画像からギザギザリベット位置を遂に特定!
計算ミスで寸法が違っていたギザギザの高さも低く修正。
必殺技の0.14mmプラペーパー。
絶版は惜しいが、一生分(?)のストックはあるかも。
ライトボックスの上にカッターナイフ台として透明のPPシート
原稿、プラペーパーを置いてライトオン!
コツコツとデザインナイフで切断。 5枚のドア全てにおいて切り抜き完了!