12月01日(日)


度重なるアップデート

サンデーフロントライン(2011年9月11日放送)。地下に汚染水が溜まっている状態を再現
さらに圧力容器の底部が見えるようにペデスタル部分もカットモデルにしました。
2011年12月1日作業開始。新たな解析結果で核燃料は大半が圧力容器を突き抜けて
格納容器底部のコンクリート部分をかなり侵食していると発表されました。
再現するために自宅に持って帰り、レーザーカッターで丸ごとカットします。
カットモデルにするために断面をプラバンで作成し、
情景テクスチャを塗布し、溶融燃料は蛍光オレンジで塗装。
一晩待ってなんとか乾燥を確認。
溶融燃料部分(蛍光オレンジ)をマスキングし、グレーのエアブラシ。
マスキング剥がすとこうなります。格納容器の底までは達していない状態を再現。
池上彰のニュースマニア(2011年12月28日放送)。


この福島第一原発の模型は、その後も何度も何度も様々な番組のスタジオで使われることになりました。しかし新しい知見が発見されるたびに、この模型にアップデートを加えなくてはなりません。

最初は地下1階の汚染水でした。これはプラバンを箱組みし、サプレッションチェンバーが入る部分をレーザーカッターで切り落とし、最終的にクリアーブルーをエアブラシすることで、地下に溜まった汚染水を表現しました。

さらに圧力容器の中央ではなく底部のほうに多く核燃料が残っているという解析結果が出ると、圧力容器の底部が見えるように格納容器内のペデスタル(コンクリート製の筒)をカットモデルにする作業を後日加えました。

そんな中、2011年11月30日に東京電力は「福島第一原発1〜3号機炉心損傷状況の推定に関する技術ワークショップ」の関連資料を突然記者会見して発表しました。それによるとMAAP(マープ)という解析方法では、1号機では本来圧力容器に残っていなくいてはならない核燃料の大半が圧力容器を貫通して溶け落ち格納容器の底のコンクリート部分と激しく反応し、格納容器の底まであと70cmまで達しているというものでした。あくまでも計算上の物ですが、これも当時たいへん大きなニュースになりました。

そうなるとこれまでの模型を、造り直さなくてはなりません。格納容器の底にどんな形で溜まっているのかを一目瞭然でわからせるのは模型が最適です。それをやるにはカットモデルにするしかありません。しかし製作途中ならまだしも、塩ビ、アクリル、ポリスチレンなど強度が極端に違う複合素材で完成しているものをカットモデルにすることは非常に困難を伴います。しかしここでもレーザーカッターに救われました。素材に関係なく、綺麗に切断してくれました。翌日の早朝番組にスタジオ出演が決まっていたので乾燥時間との勝負です。特にタミヤテクスチャーペイントの仕上げに惚れ込んでいたため、乾燥機を使えない中での乾燥時間との戦いはヒヤヒヤの連続でした。

なんとか無事にアップデートを終え、翌日スタジオ出演にも間に合いました。その後、この年の末には池上彰さんの特別番組にも模型と一緒に出演しました。「模型を使ってスタジオでわかりやすく説明する」元祖でもある池上さんとは、おかげさまで親しくさせて頂いておりまして、池上さんも私のことは「理工系出身の面白い人物がいる」と認識して頂いています。最近の池上さんの著作に私の名前が突然出て来たのでびっくりしました。

原発問題はおそらく私は何らかの形で一生関わっていく事になると思います。ひとりでも多くの方にわかりやすく説明する一助に模型が役立ってくれれば・・・それが私の小さなこだわりです。

(2014/01/23)