アーチュリー

発売時期 発売時価格
1966/03 ¥300


何度も何度も手に入れる夢を実際に見たアーチュリー


当研究室助手は1963年の早生まれです。ファーストタミヤキットは何度か書いているように小学3年生の時に叔父さんに買ってもらった1/100ミニジェットのイリューシンとミラージュですから、1971年の事ということになります。あっという間にタミヤの虜になり、シリーズラインナップを大学ノートに自分で書き出し自作リストを作っていきました。数年してからは1/35リモコン戦車やミリタリーミニチュアシリーズにハマって行きました。後に4歳上の従兄弟が持っていた1972〜1974年の3冊の総合カタログを見せてもらい穴のあくほど見つめたものでした。

そんな中、1/100ミニジェット機シリーズはシリーズNo.1から製品としてあるのですが、1/35戦車シリーズはNo.7のM41ウォーカーブルドッグから始まり、しかもその後も欠番がいくつかあります。「これはナニなんだろう?」と思うのは当然の流れでした。しかし田舎の小学生が考えることですので、調べようがありません。そんな中、何かのキットの組み立て説明書に見たこともない戦車の線画イラストを見つけました。それが1/35戦車シリーズNo.14、15の「アーチュリー」と「ツインフラック」だったのです。

「欲しい!」・・・しかし全く見たこともありません。このキットはカタログ上は1971年度版まではかろうじて載っていましたが、旧ロゴのままパッケージ替えがなかった事を考えても、実際には1970年代に増産されていたとはあまり思えません。何より田宮俊作会長に聞いたところ「売れなかったですね」ということからも、私の世代でこのキットに原体験がある人はごくまれかと思われます。今から思えば「キットNo.1のパンサータンクなどに興味はわかなかったの?」と考える人もいると思いますが、当時はNo.1〜6が何なのかさえ全くわかっていなかったので、取っ掛かりがあった「アーチュリー」「ツインフラック」に夢中になったのです。

ここからが笑ってしまう当時の小学生の話なのですが、このアーチュリーを手に入れる夢を本当に何度も見るようになります。それも5回や10回ではありません。誇張ではなく100回近く見ました。最後の方は夢の中で「ああ、今手に入れたけどどうせこれは夢なんだよな」といった状態でした(笑)。そもそもボックスアートさえ知らない物ですから妄想はどんどん巨大化していきました。時は流れ大学生になって上京し、更に社会人になった頃(1988年頃?)にホビージャパン誌の某絶版模型通販ショップの誌上オークション広告に釘付けになりました。「!!!!」

そこには1cm×1.5cmほどのモノクロ写真と一緒に「タミヤ・アーチュリー」とあったのです。「こんなボックスアートだっったのか〜!!!、遂に遂に見つけたぞ!!!絶対にオークションでは負けない!!!」と、タミヤの未組み立てスロットカーを交換キットとして用意すると同時に追加金額も提示するという今見てもとんでもない好条件を手紙で送りました。でも「おめでとうございます!新たが落札しました」という手紙が来た時の喜びは何にも代えがたいものでした。実際にキットが届いて梱包を解いた時はサッと一陣の風が吹き抜けたかのような感動を覚えました。余談ですが、こういう時に限ってその数カ月後に海外の方と文通を通してわずか$10で同じアーチュリーを入手したりするのですからわからないものです。

こうして大満足でキットを入手してからさらに10年程が経ち、アーマーモデリング誌に「田宮模型歴史研究室」という連載記事を書くようになっていました。当初は未組立のキット状態のまま箱の中身や組み立て説明書を写真で見せるスタイルでしたが、やはり完成品を提示しないのは読者に失礼ではないかと思い始め、無謀にも組み立てるスタイルに変更したのでした。ここで言う無謀には当然2種類あります。絶版の超お宝キットを組んでしまうということと、超絶作例しか載っていない模型専門誌に素人の私の素組み完成品を載せるということです。

幸い複数所有していましたので一つ作っても未組み立ては所有しているので幾分気が楽でした。直前にゴールデン大和を作るという暴挙もやっていましたので、大げさに言えば使命感のつもりで作り始めました。でも最初にランナーが入ったビニール袋を破る時はそれなりに勇気がいるものですね。拙作ですので出来については一切コメントはないのですが(笑)、直後に開催された東京AFVの会に持ち込んだところ「懐かしいなあ〜、作ったよ!」という人が何人かいらっしゃって嬉しかった思い出があります。

(2014/02/08)


個人的に情報がこのイラストしか無い時代が長く続きました。
このボックスアートを知るまでに10年以上かかりました
絶版キットを「作る!」しかもあのアーチュリー!
何の事はない素組みですが、ふ〜っと息をつきます。
純正のTKK25モーターも準備します。
完成しました!あまり見られないバックビュー。
下地塗装をレッドブラウンで
小松崎画伯のボックスアートのイメージで塗装。やや明るすぎますね。
ウエザリングをしてスタジオ撮影です
排気管が立体的に再現されています
「東京AFVの会2000」にも出させてもらいました。